2ペダルとは?
最近、何かと話題にあがる「2ペダル」とは何かを今回はひも解いてみたい。
2ペダルという用語からは「ペダルが2つであること」を連想するだろう。
では、何のペダルが2つなのだろう?
ズバリそれは、【アクセルペダル】と【ブレーキペダル】である。
つまり、従来のMT車に備わっていた【クラッチペダル】がなく、AT限定の運転免許で運転が可能な自動車を指している。
そのため、トランスミッションの構造表現とは一線を画しているのが「2ペダル」という用語である。
具体的には
・古くから普及している【AT】
・最近の低燃費に大きく貢献している【CVT】
・スズキやフォルクスワーゲンが近年導入している【AGS】
が主に「2ペダル」に該当する。
2ペダルはMTに比べて遅いのか?
「オートマはミッションより遅い」
そういった声を耳にすることも多い。
しかし、先ほど説明したように「2ペダル」は変速機の定義ではなく、ペダル数の定義である。
では、何故「オートマが遅い」と表現されることが多いのだろうか?
【AT】や【CVT】にはトルクコンバーターと呼ばれるフルードカップリングによって動力を伝達する仕組みが備わっている。
この通称トルコンは流体によって動力を伝えるため、以前のATでは「滑り」が発生し伝達ロスが大きく、「遅い」と感じられていたと考えられる。
しかし、近年のトルクコンバーターでは、低い回転数から「ロックアップ機構」と呼ばれる「滑りをゼロにする機能」が備わっている。
つまり、発進時に伝達ロスは生じるものの、一定の回転数以上ではマニュアルトランスミッションと大差ない仕組みで直結されていることになる。
であれば、マニュアルトランスミッションにおけるクラッチディスクが発進時に伝達ロスがあることと、何ら変わらないことになるのである。
よって、近年のトルクコンバーターは走行中の加速で大きなデメリットがないのが事実である。
その証拠に「滑り」がないため低燃費を実現できているとも考えられる。
2ペダルのウイークポイントは?
では、2ペダルがマニュアルミッションに比べて不利な点がないかと言えば嘘になる。
【発熱によるリスク】
ATやCVTに採用されている「フルード」はATFやCVTFと呼ばれ、MTのギアオイルとは異なっている。
これらのフルードは熱に弱く、一定以上の発熱が発生すると変速機を傷める原因になることがある。
しかし、これらの発熱に関しては冷却装置の追加等で対応できる可能性も高い。
参考までにATFは出光興産の登録商標であるため、他のメーカーでは違う呼び名で呼ばれている。
また、AGSにおいては内部構造がMTと何ら変わりなく、ギアオイルが使用されているため発熱対策で不利な要素はないとも考えられる。
【LSDの取り付け】
LSDについてはAT用のLSDが発売されている車種も多い。
また、こちらもAGSを使用した場合は、MT用のLSDがそのまま使用できる可能性が極めて高く、チューニングの幅がぐっと広がることになる。
【ロケット・スタート】
ゼロからのスタートについては、回転数を上げたまま発進が困難な2ペダルは現状では不利と言わざるを得ない。
MT車を利用したロケットスタートには中々かなわないと言えるだろう。
しかし、クラッチミスによりスタートミスが発生しやすいのもMT車の不利な点でもある。
考え方によっては、確実なスタートができる2ペダルは安全かつ安心とも考えられる。
どのように変速を行うか?
「2ペダルはシフトチェンジをしない」と勘違いしてはいないだろうか?
2ペダルでサーキットを走行する際、シフトチェンジを行うことは実は当然なのだ。
クラッチ操作を自動化した車両だと考えたほうが良いかもしれない。
とはいえ、「パドルシフトやスポーツCVTでなければシフトチェンジできない」かといえばそうではない
コラムシフトであっても、フロアシフトであっても、きちんとシフトチェンジは可能なのである。
特に4AT以上のATであれば、「L」「2」「D(オーバードライブ・オフ)」「D」と使い分けることにより、何と4速のマニュアル操作が可能なことになる。
ここで特筆すべきは、そのシフトタイミングにある。
MT車であればシフト操作と同時にギアが変わることになるが、ATを上手に使用すれば「コンピュータが演算したベストなトルク配分」のタイミングでギアを変更してくれることになる。
つまり、Dを選択していても、2速で引っ張っているほうがより速ければ、3速には切り替わらないことになるのだ。
AT・CVT・AGSのいずれが最有力か?
さて、これら魅力たっぷりの2ペダルであるが、AT・CVT・AGSのいずれを選択すれば良いのだろうか?
イチオシは断然「AGS」だと考えられる。
理由はMT車のチューニング・テクノロジーを最大限に有効活用できるからである。
クロス・ミッションやLSDをはじめ、ギアのあらゆるチューニングが従来の技術で可能となる。
そのうえで、クラッチ操作が不要かつAT免許で運転できるのであるから申し分がない。
では、CVTやATはダメかといえばそうではない。
CVTであってもスポーツシフトがあるモデル、ATであっても4AT以上の多段変速ができるモデルであれば、十分な戦闘力が発揮できるだろう。
中古相場が割安になってきたCVTやATと、新技術AGSの対決が見られる日もそう遠くはないかもしれない。